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ハリポタ、ポケモン、みえるひと中心二次創作ブログ。 初めての方はカテゴリー内の「初めに」をお読み下さい。
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だから誰もBボタンを連打するなとあれほど
まあ無理そうだなーとは思ってましたが。さーて再び履歴書にえぐり込むようにー打つべし!

久し振りにカテゴリーの大掃除をしました。D.Gray-manとBLEACHを中心ジャンルからその他版権に移動、ハリポタとポケモンをメインに格上げ。しかしメイン2つを格下げしたためリンク用のバナーが異常に寂しくなりましたwww早いとこ作らんと…
ノア家や十一番隊の面々は今でも好きですが、何と言うか…原作そのものに対して若干萎えてきtゲフンゲフン!!
一緒にリンクの整理もしました。サーチサイト様2件、有難う御座いました!…あ、でもノアンソロサイト様は切りません(笑)

カテゴリーを掃除し、ハリポタをメインに格上げ後の記念すべき1作目。なのですが、
絵ではなく文章という脈絡の無さ。すみませんorz
一応スネハー…だと思うんですが…。どちらかと言うとスネ←ハー?
拙宅では先生のお相手は「7巻ネタバレを考慮して涙を呑みながら名前を言うのを堪えるべき例の女性」が大前提なので、どうすっ転んでも左向きの矢印にしかなりません。
更に言うと、この小説でハー子が先生に向けている感情は「好き」ではなく「尊敬(多分)」です。今まで嫌いだったけど、少し見直した、的な。もはやカップリング表記して良いのかすら分からねえ
ちゃんとしたスネハー、もといスネ←ハーを書こうとすると、どうしても先生が天然タラシにしかならないんです…って、誰だよそれwww
どうでもいい話ですが、先生の台詞を考える時は「現代 を生きる30代男性…慇懃無礼…滑らかな皮肉…現代を生きる30代男性…慇懃無礼…滑らかな皮肉…現代を生きる30代男性…慇懃無礼…滑らかな皮肉…」と、脳内で呪文のように繰り返しています。こりポタの呪縛を振り払うのに一苦労orz

…と言う訳で、追記よりスネ←ハー(?)小説です。
時期は2年生の頭辺りをイメージ。若干6巻ネタを匂わせております。

+ + + + + + + + + +
 呪文学の授業冒頭で、フリットウィックは教壇に立ち、軽くあいさつをすると笑顔で言った。
「それでは最初に、前回の授業で言ったレポートを提出してもらいましょうか」
 途端に、教室のあちこちから生徒のため息やうめき声が漏れる。生徒からの人気に定評のあるフリットウィックであるが、誰が課したものであれ、レポートという物は生徒にとって頭痛の種以外の何物でもない。
 少し間を置いて、そろそろと教壇に向かって生徒の列が出来る。徐々にレポートが教壇に積み上げられ山となり、それが高くなっていく中、フリットウィックは唯一足取り軽くやって来た生徒に声を掛けた。
「ミス・グレンジャー」
 ハーマイオニーが目をやると、そこにはにこやかな笑みを浮かべたフリットウィックがいた。
「あなたのレポートはいつ見ても素晴らしいですね。私も教職に就いて長いですが、その歳であなた程熱心で、なおかつ優秀な生徒はそうそういませんよ」
「ありがとうございます!」
 教師からのこの上ない賛辞に、ハーマイオニーは感謝の意を述べる。――ほんの一瞬、気付くか気付かないか程度の、わずかな間を置いて。
 
 
 
   漆黒の魔法薬
 
 
 
「――では、この薬の効能について答えられる者は?」
 重苦しい空気の地下教室に、スネイプの冷たい声だけが響き渡る。
「おやおや、誰もいないのか?という事は、誰一人として事前に教科書を読んで来ようとはしなかったと?」
 何とも嘆かわしい限りだ、と言うその表情は、この現状を嘆くというよりむしろ楽しんでいるように見えた。
 グリフィンドール生のいら立った空気が蔓延する中、
「先生、よろしいでしょうか?」
 すっと挙手する生徒が一人。
 発言の許可を乞うハーマイオニーに、それを無視するスネイプの図は、魔法薬学ではもはやお馴染みの光景となっていた。例によって例のごとく聞き流すスネイプに負けじと、ハーマイオニーは説明を始める。
「この薬の効能は解毒です。軽度のものや初期症状には、その毒の種類を問わず有効ですが、重篤な症状や猛毒には――」
「私は発言を許可した覚えなど無いが?ミス・グレンジャー」
 説明を続けようとするハーマイオニーを、スネイプの声がぴしゃりと遮った。
「ですが、先程先生は私達に質問されたでしょう?私はそれにお答えしただけです。もし間違っていたのであれば、その点をご指摘ください」
「――なるほど」
 果敢にも食い下がるハーマイオニーに、スネイプは不敵な笑みを向け、悠然と歩み寄る。その目に宿った危険な光に、しまった、と後悔するも、時既に遅し。
「聡明なるミス・グレンジャーは、余程ご自分の知力に自信がおありのようだ。なればお答え頂こう、ミス・グレンジャー。この薬の実用性はどこにあるか?なぜ私はこの薬を今回取り上げたか?」
 ――この薬の…実用性?
 スネイプの畳み掛けるような質問に、ハーマイオニーは思わずたじろぐ。
 実用性についての記述は、教科書には無かったはずだ。スネイプがなぜこの薬を取り上げたかなど、それこそハーマイオニーが教科書を読んだ時からの疑問である。
 もっと複雑で薬効の高いものなら、他にいくらでもあるはずだ。しかし、この薬は今の学期で煎じるには――少なくともハーマイオニーにとって――拍子抜けするほど簡単な上に、効果は軽度の毒に対してのみである。どうしてスネイプが今更こんな魔法薬を取り上げるのかと、教科書を読んだ時は首をひねったものだ。
 きっと質問の答えはそこにあると、材料や手順から自分なりに考えるも、
「――答えられないのであれば、過度の口出しはお控え願おう」
 時間切れとばかりにそう言うと、スネイプはじろりと目だけを動かして教室を見回した。
「教師に対する尊大な態度により、グリフィンドール10点減点。それからミス・グレンジャー…今夜9時に私の部屋へ。授業妨害、及び不勉強に対する罰則をじっくりと考えておこう」
 まるで重罪の判決を言い渡すような厳格さでハーマイオニーに言い放つと、スネイプは何事も無かったかのように授業を続ける。
「確かに、この薬は解毒剤であり、軽度の毒に対してのみ有効だ。では、さして優れた効能を持たないこの薬が、なぜ未だに淘汰されず使用されているのか?その理由は、製薬の容易さと材料にある」
 教壇の上へ、大きなコウモリよろしくローブをはためかせて歩きながら、スネイプはいつもの調子で説明する。ハーマイオニーはそんなスネイプに抗議の眼差しを送ったが、問題の当人は全く意に介さない様子だった。
「煎じてみるまでもなく分かる事だが、この薬はさほど難しい物ではない。材料の刻み方、鍋に加える順番さえ間違えなければ、まず失敗はしない。――もっとも、真っ当な製薬法を心得ていれば、の話だが」
 そう言うスネイプの視線が、ネビルとハリーに突き刺さる。
 ハリーは言うまでもないが、スネイプが魔法薬学の授業において、ネビルを目の敵にしているのは周知の事実だ。ネビルが失敗するのは不勉強だからではなく、スネイプが不要なプレッシャーを掛けるからではないか、とハーマイオニーは更にスネイプを睨みつけた。
「更に、使用する材料も比較的安価で入手はたやすい。その上、身近な野草や材料で代用可能だ」
 え、とハーマイオニーは一瞬怒りを忘れて目を見開く。教科書には“煎じるのが簡単な解毒剤”といった旨の記述しかされておらず、材料が代用可能な事など少しも載っていなかった。
「解毒を要する場面は、往々にして緊急時が多い。特に、時間経過によって症状が悪化する類の物であれば、早急な対応が何より重要であるのは当然の事だ。運良くベゾアール石でもあれば良いが、あれはそうたやすく手に入る代物ではない。高品質の解毒剤を煎じるにしても、大半がユニコーンの角やドラゴンの血液など、すぐには入手不可能な物が材料に含まれている上、手順が複雑で時間も要する。
 その点、軽症ならば種類を問わず解毒可能で、緊急時に適した特性を持つこの薬は十分に有用であると言える。その実用性ゆえ、今もなおこの薬は他の解毒剤に埋もれる事無く使用され、また私は授業で取り上げた。今学期を選んだのは、材料の刻み方をある程度身に付ける必要があり、今学期大半の生徒がそれを習熟したと判断したためだ。――何か質問のある者は?」
 説明を終え、スネイプはハーマイオニーに冷たい一瞥を投げる。挙手する者はいない。
 作業開始を指示すると、スネイプは生徒の間を縫うように歩き、その様子を見て回る。ハーマイオニーも材料を刻もうとして――前の席に座るネビルに目がとまった。教科書を広げ、何やら小首をかしげている。
「ネビル、どうかした?」
「いや、うん、あのさ…」
 ハーマイオニーの方を振り向き、ネビルは小声で話し出す。
「ちょっと違うんだ、これ。僕が知ってるのと」
「違う…って、何が?」
「授業妨害の後に私語とは、評判の才媛にとって私の授業はそんなにも退屈ですかな?ミス・グレンジャー」
 聞く者の心までも凍てつかせるような声に思わず顔を上げると、いつの間にかそこにはスネイプが立っていた。その黒い立ち姿からは、一切の反論を許さぬ威圧感が放たれている。
「授業中の私語厳禁、グリフィンドールから更に5点減点。それからミスター・ロングボトム。質問があるならば挙手するようにと、先程申し上げたはずだが?」
「は、はい…すみません…」
 険のある目つきで一睨みされ、途端にネビルは畏縮する。彼にスネイプの授業で発言させるなど、カエルにヘビの前へ飛び出せと言うようなものだ。
「君が私の授業を理解出来ないのは今に始まった事ではないが、今回は何が分からないのかお聞かせ願いたい」
「あ、あの…少し、違うんです…。材料とか…作り方が、婆ちゃんから聞いたのと…」
「して、その相違点とは?」
「トカゲの尻尾が、イチイの葉で…鍋の混ぜ方は、右回りに素早くじゃなくて、左回りにゆっくり、って…」
「一応訊いておくが、お祖母様の煎じたその薬を飲んだ事は?」
「あ、ありません…」
「だろうな。君が今ここにいるという事実が何よりの証拠だ。その機会に恵まれなかった幸運に感謝すべきだろう」
 自分としては残念至極だ、と言いたげな表情で言い捨てると、スネイプは背を向けて再び生徒を見回り始める。取り残されたネビルはというと、血の気の失せた顔でしばし固まっていたが、やがて乾燥したトカゲの尾を刻み始めた。
「――次回までに、この解毒剤を煎じるのに代用可能な材料を全て調べ、羊皮紙2巻以上のレポートにまとめる事。どれがどの材料の代用であるかも含めてだ。以上」
 授業終了のベルが鳴ると、スネイプはそう言い残し、教室を去って行く。その後ろ姿を、ハーマイオニーは釈然としない様子で見ていた。
 
「ったく、何なんだよスネイプの奴!」
 魔法薬学の授業が終わり、次の教室に移動しながら、ロンはお馴染みの悪態をついた。
「教科書に載ってない事なんか、知ってるわけないだろ?」
「そうだよ。気にする事ないさ、ハーマイオニー。スネイプはどうせ、いつも正解を言う君が癪で嫌がらせしてるだけなんだ」
「うん、そうよね、きっと…」
 ハリーとロンの気持ちは嬉しかったが、いくらスネイプだからといって、当てこすり程度の質問内容をわざわざレポートにまでするのか、ハーマイオニーにはいささか疑問だった。それに、ネビルの一件も引っ掛かる。なぜ、彼の祖母は製薬方法を間違えて覚えていたのだろう?
「単なる当てつけだろ、当てつけ!僕らの学年じゃ、寮全部合わせたってハーマイオニーが一番頭が良いに決まってるんだしさ」
「――ありがとう、ロン」
 当然だとばかりに言い切ったロンの言葉に、ハーマイオニーはそっと微笑んだ。
 
 その日の夜。スネイプの部屋の前で、ハーマイオニーは小さくため息をついた。
 ――何で、こんな目に…。
 スネイプを相手に強気な態度を取るなど賢明ではない事くらい、この何年かで嫌というほど思い知っている。しかし、ああも毎度無下にあしらわれると、少しは反抗したくもなるというものだ。
 ――私の説明だって、あれはあれでちゃんと合ってたじゃない!
 こんなの、ただの言い掛かりよ、と自分に言い聞かせると、ハーマイオニーはドアをノックした。
「入れ」
「…失礼します」
 ぞんざいな返事にドアを開けると、ホルマリン漬けや魔法薬の材料がずらりと並んだ部屋が現れる。まるで地下教室そのままだ。空気まで冷え切っているのは、部屋が地下にあるためか、はたまた部屋の主が身にまとう雰囲気のせいか。
 かの人は机に向かい、レポートの採点をしていた。羽根ペンが羊皮紙の上をせわしなく滑る音だけが聞こえる。
「そこに掛けなさい」
 ハーマイオニーをちらと見ると、机の前に置かれた椅子を左手で示す。席に着くのとほぼ同時に、羽根ペンの音がやんだ。
「…さて。自分がなぜここに呼ばれたか、お分かりでしょうな?ミス・グレンジャー」
 冷ややかな眼差しで真正面から見据えられ、一瞬ひるむもハーマイオニーは自分を叱咤し、口を開いた。
「…分かりません」
 それを聞き、スネイプの片眉が上がる。
「確かに私は先生の許可無く発言しました。ですが、説明は正しかったはずです。質問に対する答えとしては――」
「やはり何も分かってはいないようだ」
 刺すような視線に構わず話し続けるも、やはり途中で有無を言わせずに切り捨てられる。
「確かに説明としてはあれでおおよそ合っている。だが、あの程度の解答なぞ、教科書を丸暗記すれば誰でも可能だ。私はそんなものを“知識”とは認めない」
 スネイプの流れるような弁舌に、何か言いたくとも何も言えず、ハーマイオニーはただじっと話を聞いていた。
 その内、授業でスネイプの説明を聞いていた時に浮かんだ疑問を思い出し、あの、とハーマイオニーは口を開く。
「今日の説明で、先生がどうして、今回の授業であの薬を取り上げたのかは分かりました。現在使われている理由も。ですが、薬の材料が他の物で代用出来る事は、教科書には――」
「教科書に載っていなければ知らずにいても仕方無いと?才女の誉れ高いミス・グレンジャーの言葉とは思えませんな」
 口の端をゆがめ、皮肉っぽく笑うスネイプの言に、ハーマイオニーは一瞬言葉を詰まらせるも、その教科書を指定したのは誰だとばかりに睨みつける。彼女の意図を察したのか、スネイプは付け加えるように言った。
「私があれを教科書に選んだのは、あの薬に関する記述がなされた書物の中でも詳細に記した物の一つであり、他の薬品についても適切に説明されていたからに他ならない」
「という事は…詳しく書かれていない物もあると?」
「むしろその方が多い。薬品名を一行載せるだけか、それすらもしない物が大半だ」
「で…ですが、有用な薬なら、どんな教科書にも詳しく載っていそうなものですが?」
 まだ分からないのか、と言いたげな顔で、フンと鼻を鳴らすとスネイプは話し始める。
「確かにあの薬は現実場面では有用だ。だが、単純に効能だけを見ると、解毒効果の低い粗悪品というそしりは免れない。使われる場面も癒者が手ずからではなく、応急処置や緊急時の対処法としてが主だ。それですら、猛毒や劇薬には全くの無力ときている。それゆえ、学者の間ではあの薬を軽視する傾向があった。わざわざ教科書に載せる程の代物ではない、とな。――君と同様にだ、ミス・グレンジャー」
 そう言うと、呆れ返ったようにため息をつく。
「全く、この程度の者が成績優秀生とは…先生方は一体何を考えておられるのやら」
 その言葉に、思わずハーマイオニーは椅子から立ち上がる。
「他の先生方は、私の事をきちんと評価してくださっています!いつも熱心に努力していると――」
 ――学生にしては。
 不意にそんな言葉が浮かび、胸の奥にやすりで擦られたような、ざらりとした感覚が走る。
 学生にしては。年齢の割に。同じ歳の生徒の中では。彼女への賛辞に、いつも付いて回る言葉。
 教師達は掛け値無しに彼女の努力と才知を褒めているのだ。彼らに他意は無い事など、ハーマイオニーも分かっている。――分かっては、いるのだが。
「他者の評価をもってしか、自身の正当性を判断出来ないとは…呆れを通り越して憐れみさえ覚える」
 黒い双眸が、ハーマイオニーのそれを捕らえる。
「秀才だ、模範生だと誉めそやされ、のぼせ上がっているようだが、私に言わせればそんなものは君自身の努力の賜物などでは断じてない。ミス・グレンジャー、君のしている事は、教科書に書かれた事柄をただそのまま覚えている、それだけだ」
 腕を組み、眼光を鋭くしながらスネイプは続ける。
「君が評価されているのは、単に先生方の選んだ教科書が良かったというだけの事。そこに記された以上の知識は頭に無く、綴られた文章を盲信し、情報の取捨選択、真偽の確認などしようともしない。
 無論、著作として出版される以上、正確な情報を掲載するのは最低限かつ当然の義務であり、誤った内容のまま刊行するなどもってのほかだ。だがそれは、読む側の怠慢を正当化するためのものではない。君は、教師が求める最低限の水準さえ満たしていればそれで良いと考えている、向上心の無い他の生徒とさして変わらない。仮に誤った内容を載せた物が教科書として採用された場合、君はどうするつもりだ?」
「…お言葉を返すようですが、それならどうしろとおっしゃるのですか?教科書に書かれている事を、端から全て実際に確認してみろと?先生は、私達にそこまで――」
 理不尽とも思えるスネイプの言葉に反論するも、不意にハーマイオニーは口をつぐんだ。
 そう、そこまで求めるのだ。このセブルス・スネイプという人は。一切の妥協を許さず、例え相手が生徒であってもそれは変わらない。いや、生徒だからこそ、“学生”である事を盾に、適当な出来で良しとする者を厳しく律するのだろう。
 自寮生をひいきする上、やはり教師としては理不尽極まりない態度だが――学生だからといって、容赦はしない。そんな教師が一人いる。
「少なくとも、複数の書物を比較し、情報の精度を高める程度の事は出来るはずだ。――私は、笑い話をしているつもりなど無いのだが?ミス・グレンジャー」
「は、はい、すみません」
 無意識の内に口許がほころんでいたのか、怪訝そうな表情で見咎められ、慌てて顔を引き締める。
「…あの、先生。少し、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「何のためにここへ呼ばれたのか、本当にお分かりでないようですな」
 眉根を寄せ、不快感をあらわにするも、それ以上は何も言わないスネイプの反応を許可と見て、ハーマイオニーは質問した。
「先程、先生は“学者の間ではあの薬を軽視する傾向があった”とおっしゃいました。あった、と。という事は、今は違うのですか?」
「あの解毒剤の地位が向上したのか、という質問ならば、答えは否だ」
 組んでいた腕をほどき、頬杖をつきながらスネイプは話し始める。
「先程も言ったように、あれが使用されるのは応急処置や緊急時の対処法としてが主であり、癒者の手で処方されるような事はまず無い。癒者の治療を受けられる場所、すなわち病院ならば、更に高品質で最適な解毒剤が豊富にあるはずであり、そちらを採用すべきなのは当然の事だ。あれの特長は身近な材料でも作れ、製薬が容易という点であり、品質の良さが評価されているわけではない。
 その性質ゆえ、民間療法に毛が生えた程度の物だとの判断から、長年の間教育現場で取り上げられる事も無かった。結果、正しい製薬法を知る機会が減り、口づてに広まる中でその内容が徐々に変化し、ゆがめられ、解毒作用の弱い物が横行するようになった。中には効果の全く無い物や、それ自体が毒性を持った、粗悪品では済まされないような代物まで、ごく少数だが出回る始末だ。これでは民間療法以下と言う他無い」
 ――あ…。
 それを聞いて、ハーマイオニーは今日の授業での、ネビルとスネイプの言葉を思い出した。
 ――ちょっと違うんだ、これ。僕が知ってるのと。
 ――その機会に恵まれなかった幸運に感謝すべきだろう。
 ネビルの祖母は恐らく、人づてに製薬法を聞いたのだろう。もしくは、昔に作り方を教わったものの、長い年月の間に記憶が変化し、それを改める機会に恵まれなかったのかも知れない。それがもし解毒効果の無い物か、有毒な物だったら――。
「――ちなみに、ミスター・ロングボトムの祖母が覚えていた製薬法は、解毒剤という名の毒薬のものだ」
 ハーマイオニーの考えを見透かしたかのようなスネイプの言葉に、彼女の背筋は凍りついた。よりによって、数ある粗悪品の中でもごく一部の、毒性を持った物だったとは。ネビルがこの薬を使う機会に恵まれなかった事は、まさに不幸中の幸いだったと言うべきだろう。――それにしても彼は、本当に運が良いのか悪いのか。
「現状を改善しようと、あの解毒剤の製薬法を指導内容に取り入れる事が決定された。だが、その後教科書用にと発行された著作はどれも、代用可能な材料についてまでは言及していない。あくまで正確な製薬方法を知る機会を設ける事が目的であり、それさえ満たしていれば良いというわけだ。私が言ったのは、少なくとも教師が授業で教える必要性は無いという認識が変化した、といった程度の事に過ぎない」
「新たに出版された物に、代用可能な材料が載っていないのなら、過去の発行物には?載っていないのですか?」
「掲載している物もある。だが、他の薬品に対する記述が不十分だ。私は何も、この一年間をあの解毒剤の製薬法に費やすわけではない」
 スネイプの説明を聞きながら、この人がもし教科書を書いたなら、一体どんな物になるのだろうとハーマイオニーは考えた。きっと、恐ろしく分厚くなるに違いない。
「では、その本はホグワーツにも?」
「学ぶ者として当然の努力をすれば容易に見付かる。教科書に載っていない、資料が無いから分からないなどという言い訳は通用しない。君のご友人にもそう伝えておけ」
「はい…あの、先生はなぜ、あのレポート課題を出されたのですか?正しい製薬方法を教えさえすれば良いとおっしゃっていましたが」
「…君の言う“少し”と、私の思う“少し”の間には、大いなる隔たりがあるようですな」
 少しでも間を置くと遮られてしまいそうな気がして、ハーマイオニーが矢継ぎ早に質問していると、眉間のしわを一層深くしながらスネイプが言い放つ。無視されるかと思ったが、いかにも面倒そうな表情は崩さず、ため息をつくと彼は口を開いた。
「何度も言うように、あの薬の長所は製薬が容易である事の他にもう一つ、身近な材料で代用可能な事だ。この二点がそろっているからこそ、緊急時の応急処置用として活路を見出され、使用されている。それを考慮すれば、一方のみ教えたところで十分とは言えない。それに、いくら教師が壇上で言葉を尽くしたところで、生徒自身が調べなければ身に付く事は無い。もっとも、自ら調べれば身に付くなどと、君達に期待はしていないが。――そろそろ、本題に移ってもよろしいですかな?」
 はい、ありがとうございました、とハーマイオニーが小さく一礼すると、スネイプは指を組み、その手を机の上に乗せた。
「ミス・グレンジャー。君の罰則は――」
 
「嘘だろ、何だよそれ!」
 翌朝、食事の席にロンの悲痛な叫びが響き渡る。
「本当よ。“君は今まで、ただ他人の言葉を書き写してばかりいた。自分の言葉で文を綴れば、今までの評価が全て君に対してではなく、その他者に対してのものだった事が分かるだろう”って、消灯時間ぎりぎりまで反省文の書き取り罰を――」
「僕が言ってるのはその事じゃない!その後の!」
「ハーマイオニー、一ヶ月間禁止されたのは、魔法薬学の授業中に挙手する事だけだよね?」
 一方は頭を抱え、一方は聞き間違いであってくれと願うような眼差しで見つめてくる友人達を横目に見ながら、パンに手を伸ばし、彼らの方に向き直るとハーマイオニーは現実を突き付けた。
「挙手だけじゃないわ。授業中、他の生徒の手助けをするのも禁止よ。もちろんレポートの手伝いもね。“不勉強な者がいたずらに授業時間を浪費する事だけでなく、半端な知識を他の生徒に植え付ける事も授業妨害に当たる”ですって」
「でもさ、ハーマイオニー。スネイプの目の前でレポートを書くわけじゃないんだから――」
「残念でした。私が手伝ったかどうか、先生が見ればすぐに分かるそうよ」
 なおも引き下がらないロンに、それも当然よね、と、パンを一口大にちぎりながらハーマイオニーは言う。だって私が手伝えば、二人とも面白いくらい、私と同じレポートになるんだもの。
「ハリーもロンも、私に頼り過ぎよ。良い機会だから、たまには自分達だけで勉強してみたら?自分で調べないと、ちゃんと身に付かないわよ」
 ちぎったパンを口に運びながら言うと、恨めしげにスネイプを睨むロンの隣から、ハリーが不思議そうな視線を投げてくる。
「…ハーマイオニー、何だか嬉しそうだね?」
「――そう?」
「何て言うか、少し明るくなったような…。最近、何だか元気無かったみたいだから。気のせいかも知れないけど」
 ハリーの言葉に、ハーマイオニーは笑って答えた。
「とっても苦いけど、よく効く薬をもらったの」





6巻で、教科書のやり方に従い続けているハー子を見て、先生がこのハー子の姿を見たら何て言うんだろうか、と思い、以前ちまちまと携帯で打っていた代物。未完成のまま送信ボックスに埋もれていたのを、せっかくなので掘り起こして一応形にしてみました。文章が乗ってきた時に限って毎度充電が切れるのは何かの呪いなのか。いやコイツがツンデレなのか。
確実に文章力下がっとるorz 先生はかなり理不尽な事を言ってるんだけど、ハー子にとってその理不尽さが少し救いになった、みたいな話が書きたかったんですが。ちゃんと伝わってんのかこれ
漢字とひらがなのバランスが難しいです。
2013/06/28 一部加筆修正
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無題
うっとり
師弟関係でリスペクトのあるスネハーは素敵ですね!
T子 2016/04/26(Tue) 編集
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プロフィール
HN:
白波麗
年齢:
1129
性別:
非公開
誕生日:
0894/12/28
職業:
漫画家志望のフリーターにジョブチェンジ
趣味:
絵描き
自己紹介:
別名「マダオ」

先日の会話より抜粋。
白「何かアゴ痛い…」
姉「何かした?」
白「最近の人は飯食ってもあんまり噛まないで飲み込むってよく言うから、物凄い力入れて何回も何回も噛んでから飲み込んだりしてた。絶対それが原因だと思うけど」
姉「それ、ガク関節症じゃない?」
母「だったらひめのん見てれば治るね。ガクが緩んで」
…しばらく患いたい所存。

能天気な性格。
2007年9月5日にしょうもない出会いをしたようだ。
食べるのが大好き。
食べられるものが好き。
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